メインコンテンツへスキップ 【プロダクトマネジメント実践講座】プロダクトマネジメントを、現場で使えるレベルまで体系的に。 実践講座の詳細 →

プロダクト戦略

ポジショニングと差別化の戦略

セグメント・競合の代替・独自価値の3点からポジショニングを組み立て、GTMとロードマップにどう接続するかを整理します。

Kreodo Product Academy 編集部 約6分
要点

ポジショニングはキャッチコピーづくりではなく、「誰と比較され、なぜその顧客にとって自社が選ばれるのか」を決める戦略的な選択です。最適な顧客セグメント・競合の代替手段・独自の強みの3点を整理すると、メッセージだけでなく販売チャネルやロードマップの優先順位まで一貫させられます。ポジショニングを曖昧にしたまま進めると、GTM施策とプロダクト開発の判断がそれぞれ違う前提で進み、後になって整合性が崩れます。

なぜポジショニングを「言葉づくり」で終わらせると失敗するか

ポジショニングをタグラインやウェブサイトのヒーローコピーの話だと捉えているチームは少なくありません。しかし言葉を整える作業は、ポジショニングという意思決定の最後の工程にすぎません。その手前で決めるべきなのは、自社プロダクトが誰の、何と比較されているかという事実です。

この順序を飛ばしてコピーライティングから始めると、営業は競合A社と比較して話し、マーケティングは別の切り口で広告を出し、プロダクトチームはまた別の顧客像を想定して機能を作るという状態が生まれます。それぞれの部門の言っていることは間違っていなくても、全社として一貫した立ち位置になっていません。

セグメント・競合の代替・独自価値 — ポジショニングを構成する3つの要素

プロダクトマーケターのApril Dunfordが提唱する整理では、ポジショニングは最適な顧客セグメントの特定から始まります。あらゆる顧客に刺さるポジショニングは存在しないという前提に立ち、自社の強みが最も際立つ顧客像を先に絞り込みます。

次に検討するのが競合の代替手段です。ここでいう代替は同業他社の製品だけを指しません。顧客が自社プロダクトを使わなかった場合に何をするか、という視点で見ると、表計算ソフトでの手作業や、専任担当者を雇うといった選択肢が「本当の競合」であるケースが珍しくありません。この代替手段が明確になって初めて、自社の独自の強みがどこにあるかを比較の中で示せます。強みは機能の一覧ではなく、その機能が顧客にもたらす価値として言語化する必要があります。

ポジショニングステートメントの組み立て方

実務では、次のような型に当てはめて仮のステートメントを作り、社内でレビューする進め方が扱いやすいです。以下は説明のための例であり、実在のプロダクトを指すものではありません。

[対象セグメント] にとって、
[プロダクト名] は [競合の代替手段] とは違い、
[独自の強み] によって [顧客にとっての価値] を実現する。

例:
複数チームで案件を並行管理する中小企業のPMにとって、
本プロダクトは表計算ソフトでの進捗管理とは違い、
チーム横断の自動集計によって、報告作業に費やす時間を削減する。

このステートメントは顧客向けの文章としてそのまま使うものではなく、社内の意思決定を揃えるための下書きです。営業資料やウェブサイトの言葉は、ここから改めて磨き込みます。

ポジショニングをGo-to-Marketとロードマップに接続する

ポジショニングが決まると、チャネルの選び方が変わります。競合の代替手段が「手作業」であれば、無料トライアルからのセルフサーブで置き換えの手軽さを体験してもらう動線が合いやすく、代替手段が「大手ベンダーの既存契約」であれば、意思決定者に直接アプローチする営業主導の動線が必要になります。この使い分けについてはGo-to-Market戦略とローンチの実務で扱っています。

ロードマップにも同じ選択が波及します。手作業からの乗り換えを狙うなら、オンボーディングの容易さや初期設定の手間を減らす施策が差別化の核になり、大手ベンダーからの乗り換えを狙うなら、セキュリティ認証やエンタープライズ向けの管理機能が優先度を持ちます。ポジショニングを戦略・ロードマップの流れの中でどう位置づけるかは、プロダクトビジョン・戦略・ロードマップの違いと接続でも整理しています。

よくある誤り — 機能の値段表になったポジショニング

もっとも頻繁に見かける誤りは、独自の強みを機能の羅列として並べてしまうことです。機能の一覧は競合が同じ機能を実装した瞬間に効力を失いますが、顧客にとっての価値として語られた強みはそう簡単には崩れません。もう一つの誤りは、対象セグメントを広く取りすぎることです。あらゆる企業規模・業種に対応すると謳うポジショニングは、結果としてどの顧客にも刺さらない言葉になりがちです。とはいえ、セグメントを狭めすぎると市場規模が小さくなりすぎるという別の緊張関係もあるため、絞り込みの度合いは事業のステージや資金状況とあわせて判断する必要があります。

次の一歩

ポジショニングは一度決めたら固定するものではなく、競合の動きや自社の強みの変化に応じて定期的に見直す対象です。見直しの際は、営業の現場で実際にどの代替手段と比較されているかをヒアリングし、当初の想定とずれていないかを確認します。ロードマップとの接続を具体的な優先順位づけの手順として実践する方法はロードマップの作り方と優先順位づけの実務で扱っていますので、あわせて確認してください。GTMの実務全体についてはGo-to-Market戦略とローンチの実務もご覧ください。

参考文献

  1. April Dunford. "Obviously Awesome: How to Nail Product Positioning so Customers Get It, Buy It, Love It." Ambient Press, 2019.
  2. Geoffrey A. Moore. "Crossing the Chasm: Marketing and Selling High-Tech Products to Mainstream Customers." HarperBusiness, 1991(改訂版あり).
  3. Al Ries and Jack Trout. "Positioning: The Battle for Your Mind." McGraw-Hill, 1981(改訂版2001年).
  4. Reforge. "Go-to-Market Strategy Frameworks." Reforge Guides.

関連する記事

プロダクトマネジメント実践講座

記事の先へ — プロダクトマネジメント実践講座で体系的に学ぶ

無料記事は入り口です。有料のプロダクトマネジメント実践講座では、ディスカバリーから ロードマップ・指標・Go-to-Marketまでを、実際のフレームワークで手を動かしながら体系的に習得します。 担当プロダクトの意思決定にそのまま活かせる、実践型のカリキュラムです。

まずは最新情報を受け取りたい方は、こちらからニュースレターにご登録ください(無料)。