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プロダクト基礎

プロダクトビジョン・戦略・ロードマップの違いと接続

ビジョン・戦略・ロードマップ・OKRは同じ階層の言葉ではありません。それぞれが何を担い、どうつながるかを整理し、ビジョンから機能リストへ直接飛ぶ失敗の構造を説明します。

Kreodo Product Academy 編集部 約5分
要点

ビジョン・戦略・ロードマップ・OKRは、抽象度も更新頻度も異なる別の階層の道具です。ビジョンは数年単位で変わらない到達点、戦略はそこへ至るための集中対象の選択、ロードマップは戦略を実行するための時間軸付きの計画、OKRは四半期程度の実行を測る目標設定です。この階層を飛ばし、ビジョンから直接「作る機能のリスト」を作ってしまうことが、ロードマップが迷走する最大の原因のひとつです。

四つの言葉が指す範囲はそれぞれ違う

ビジョン

ビジョンは「このプロダクトが世界をどう変えるか」という数年単位の到達点です。頻繁に変えるものではなく、日々の意思決定に直接答えを出すためのものでもありません。抽象度が高いぶん、そのままでは何を作るべきかの判断材料になりません。

戦略

戦略は、ビジョンに到達するために「どこに集中し、何を捨てるか」を選ぶ意思決定です。Richard Rumelt は著書『Good Strategy Bad Strategy』の中で、良い戦略は診断(現状の核心的な課題は何か)・基本方針(それにどう対応するか)・一貫した行動(具体的に何をするか)の三要素で構成されると述べています。戦略が「あれもこれもやる」という総花的な方針になっている場合、多くはこの診断が甘いことが原因です。

ロードマップ

ロードマップは、戦略を実行するための時間軸付きの計画です。ここで初めて「いつ」「何を」という具体性が入ります。ロードマップの組み方と優先順位づけの手法はロードマップの作り方と優先順位づけの実務で扱っています。

OKR

OKR(Objectives and Key Results)は、ロードマップより短い四半期程度の期間で、戦略の実行度合いを測るための目標設定の仕組みです。John Doerr は著書『Measure What Matters』で、OKRは戦略そのものではなく、戦略を実行に落とし込み進捗を可視化するための道具だと位置づけています。

ビジョンから戦略、戦略からロードマップへの接続

この四つが機能するのは、上位の階層が下位の階層に対して「制約」として働くときです。ビジョンは戦略の選択肢を絞り込み、戦略はロードマップに載せる施策の採用・棄却基準になります。逆に言えば、ロードマップ上のある機能が戦略のどの部分に貢献するかを説明できないなら、その機能は本来ロードマップに載るべきではありません。ポジショニングの選択が戦略の入力になる関係についてはポジショニングと差別化の戦略で扱っています。

OKRの位置づけ

OKRはロードマップの代わりにはなりません。ロードマップが「何を作るか」の計画であるのに対し、OKRは「その結果何が変わるべきか」という成果の定義です。OKRのKey Resultに機能のリリース自体を置いてしまう組織は珍しくありませんが、これはOutput(作ったもの)とOutcome(変化した結果)を混同した典型例です。もっとも、プロダクトの立ち上げ初期など、成果指標がまだ安定して測定できない段階では、暫定的にOutputに近い指標を置かざるを得ない場合もあります。その場合は暫定であることをチームに明示し、指標が測定可能になり次第Outcome型に切り替える運用が現実的です。

ビジョンから機能リストへ直接飛ぶとどうなるか

戦略とロードマップの階層を飛ばし、ビジョンから直接「作る機能のリスト」を作る組織では、個々の機能はビジョンと矛盾しないものの、互いに優先順位をつける基準がありません。声の大きいステークホルダーの要望や、直近の競合の新機能がそのまま採用基準になりがちです。結果として、ロードマップは長くなる一方で、どの機能を落としても説明がつかない状態に陥ります。戦略が「集中と選択」を担っているからこそ、ロードマップは短く保てるのであり、戦略を省略すればロードマップは際限なく膨張します。

つまずきやすい点

戦略ドキュメントを一度作って満たされてしまい、更新しないまま半年、一年と放置するケースもよく見られます。市場や競合の状況が変わっているのに戦略が古いままだと、ロードマップの判断基準も古くなり、現場は「戦略と現実が合っていない」という違和感を抱えたまま施策を続けることになります。ただし、戦略を四半期ごとに大きく変えるのも別の問題を生みます。頻繁な方針転換はチームの実行力を削ぐため、戦略は半年から一年単位の見直し、ロードマップは四半期単位、OKRは四半期からより短い単位で回すという更新頻度の違いを意識しておくと運用しやすくなります。

次に読む

戦略をロードマップに落とし込む具体的な手順はロードマップの作り方と優先順位づけの実務、戦略の入力となるポジショニングの考え方はポジショニングと差別化の戦略を参照してください。

参考文献

  1. Richard Rumelt. "Good Strategy Bad Strategy: The Difference and Why It Matters." Crown Business, 2011.
  2. John Doerr. "Measure What Matters: How Google, Bono, and the Gates Foundation Rock the World with OKRs." Portfolio/Penguin, 2018.
  3. Marty Cagan. "INSPIRED: How to Create Tech Products Customers Love." Silicon Valley Product Group / Wiley, 2nd Edition, 2018.

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