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ディスカバリーとUX

継続的ディスカバリーとオポチュニティ・ソリューション・ツリー

週1回の単発インタビューで終わらせず、ユーザーとの接点を常態化する継続的ディスカバリーの仕組みと、機会を構造化するオポチュニティ・ソリューション・ツリーの作り方を解説します。

Kreodo Product Academy 編集部 約6分
要点

継続的ディスカバリーは、四半期に一度の大規模調査ではなく、週次で少人数のユーザーと接点を持ち続けることで意思決定の材料を切らさない進め方です。Teresa Torresが提唱するこの習慣の中核ツールがオポチュニティ・ソリューション・ツリーで、目指す成果から機会、解決策、検証実験までを1枚の木構造で結びます。本稿では週次インタビューの回し方とツリーの組み立て手順を示します。

前提 — なぜ単発調査では足りないのか

四半期に一度、まとまった予算でユーザー調査を実施するやり方には限界があります。調査と調査の間にプロダクトの状況は変わり続けるのに、意思決定の材料は調査直後にしか更新されません。結果として、ロードマップ会議の場で「最近のユーザーの声」ではなく数か月前の記憶に基づいた議論になりがちです。Teresa Torresは著書『Continuous Discovery Habits』で、週次の小さな接点を積み重ねることで、この情報の鮮度切れを防ぐ運用を提案しています。ただし継続的ディスカバリーは大規模調査を完全に置き換えるものではありません。市場規模の推計や統計的に有意なセグメント比較のような問いには、依然としてまとまった定量調査が必要です。

手順

1. 週次タッチポイントを固定枠として確保する

チームの誰か(多くの場合PMとデザイナー)が、毎週最低1件はユーザーとの接点を持つ時間をカレンダーに固定します。1回30分程度でよく、07-user-interviewsで扱ったような深掘り質問を短縮した形で実施します。重要なのは「今週も必ずやる」という頻度の担保であり、1回あたりの規模ではありません。継続的なリクルーティングのために、プロダクト内に簡単な調査協力の申込導線を常設しておくと、都度の声かけコストを抑えられます。

2. 発言を機会(Opportunity)として記録する

インタビューやサポート問い合わせ、行動データから拾った気づきを、解決策の形ではなく「顧客が抱えているニーズ・痛み・欲求」の形で書き留めます。「検索機能を追加すべき」ではなく「大量の過去データの中から必要な1件を素早く見つけられない」という機会として記録します。解決策を先に決めてしまうと、後で別の解決策を比較検討する余地がなくなります。

3. オポチュニティ・ソリューション・ツリーを組み立てる

ツリーは4階層で構成します。

階層1: 目指す成果(Outcome)
  例)既存ユーザーの週次アクティブ率を高める

階層2: 機会(Opportunities)
  例)大量データから必要な情報を素早く見つけられない
  例)複数チームの進捗を1画面で把握できない

階層3: 解決策候補(Solutions)
  例)検索機能の追加/保存済みフィルタ/要約表示

階層4: 検証実験(Experiments)
  例)プロトタイプでのユーザビリティテスト/
      A/Bテストによる利用率比較

成果を頂点に置くことで、複数の機会が同じ目標に貢献しているか、逆に成果に寄与しない機会に時間を使っていないかを俯瞰できます。1つの機会に対して複数の解決策候補を並べる形にすると、最初に思いついた案だけに飛びつくことを防げます。

4. ツリーを週次で更新する

新しいインタビューから得た発言は、既存の機会に紐づけるか、新しい枝として追加するかを毎週判断します。半年前に作ったツリーを更新せずに使い続けると、実態とずれた優先順位づけの根拠になってしまいます。

適用例 — ロードマップ会議への接続

ツリーの階層2(機会)と階層3(解決策候補)は、そのままロードマップ会議の題材になります。優先順位づけの段階に進む際は、04-roadmap-prioritizationで扱っているRICEのようなスコアリング手法と組み合わせ、どの機会から着手するかを決めます。ツリーが「何を検討したか」の記録として残るため、なぜその施策を選んだのかを後から説明しやすくなります。

確認

ツリーの各機会に、直近1〜2か月以内の発言や行動データの裏付けがあるかを確認します。裏付けが古い、あるいは1件の発言しかない機会は、次の週次インタビューで優先的に確認する対象としてマークします。

つまずきやすい点

継続的ディスカバリーを始めたチームが陥りやすいのは、週次インタビューを実施すること自体が目的化し、得られた発言がツリーやロードマップに反映されないまま蓄積していくパターンです。もう一つの落とし穴は、階層3の解決策候補を1つしか出さずに実験へ進んでしまうことです。オポチュニティ・ソリューション・ツリーの価値は、複数の解決策を並べて比較検討できる点にあります。一方で、チームの人数が少なく週次の接点を確保する余力がない場合は、無理に毎週続けようとせず、隔週や月次から始めて頻度を徐々に上げる方が現実的です。継続できない頻度を掲げて数週間で形骸化するより、続けられる頻度を守る方が長期的には情報の鮮度を保てます。

次に読む

週次インタビューの質問設計と実施手順はユーザーインタビューの設計と実施で扱っています。ツリーから出た解決策候補を実際のロードマップに落とし込む手順はロードマップの作り方と優先順位づけの実務を参照してください。

参考文献

  1. Teresa Torres. "Continuous Discovery Habits: Discover Products that Create Customer Value and Business Value." Product Talk, 2021.
  2. Teresa Torres. "The Opportunity Solution Tree: Visualize Your Path to Desired Outcomes." Product Talk (producttalk.org)。
  3. Marty Cagan. "Inspired: How to Create Tech Products Customers Love." SVPG, 第2版, 2017.

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